92 木の葉の便り

尻別岳に登ったときのことです。風が強く木の葉が舞っていました。笹はそれを見送っているようでした。頂上付近はさらに風が強く、まるで、鳥が舞っているようでした。
また、風が行過ぎても、一葉だけ手を振っているように揺れているのを見たことはありませんか。

風が山を駆け上がると
木々は一斉に
一枚 一枚の葉に
赤や黄を添えた
便りを風に託す

便りを出せない
笹の葉はきらきらと
手を反すように揺れ
見送っている

風が行き過ぎても
まだ きらきらしている
一葉が ほら そこに

山裾から頂上へ
吹き上がった風は
さらに 雲へと便りを運ぶ
そこで 木の葉が鳥に変身する
木の葉は自ら羽ばたき
雲に乗る

雲に乗った便りは
冬の里へ行くのだろうか
もう来ても良いよって
書いているのだろうか


2001年9月29日 尻別岳にて


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