93 花の帆舟

斜里岳に登った時のことです。山全体が紅葉でした。川面にも映えて綺麗でした。しかし、当たり前の話しですが花は一つもありませんでした。あれだけ綺麗に山を彩って咲いていた花たちはどこへいったのでしょうか?

花は自らの季節の過ぎたのを知り
葉の小さな帆舟に乗りこみ
自らの色で ある花は帆を紅に
また ある花は黄色に染め
旅立ちの時を待つ

山はにわかに港のように活気付き
彩られた葉の帆舟で溢れる
帆舟は その彩りを
ソウラッナイの水面に写すが
まだ 流れの時とは悟らず
ただ キラキラと水面に輝くのみ

帆舟は木々の梢に泊まり
ざわざわと落ち着き無く揺れている
マタレラが吹き ウパスが降り
寒くなるのをじっと待っている

チユッとマタの狭間
短い紅葉の季節
夏の花々は雪の華に
何を伝えたいのだろう
白い大地となる前に


2001年10月7日 斜里岳にて


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