25 登山者と鈴


私は鈴を熊鈴と呼ばないことにしました。嫌いな人も、好きな人も読んで下さい。山ですれ違う人はほとんどと言ってよいと思いますが、再会することのない間柄です。
その一瞬が、鈴で一息つけると実感しました。    

近づきながら
遠ざかる鈴と鈴
鈴が手を振る
別れのあいさつ
小さくなったり
大きくなったり
揺れ動くような心の音色

遠ざかりながら
消えゆく鈴の音(ね)
背中に響く
確実な別れ
振り返ることもない
別れの曲
また 共鳴することもない
鈴達の鼓動

お互いに
山の空気を騒がせ
山を 木を 花を
騒がす音色
山に 木に 花に
別れのあいさつ
お互いの山行の
無事を祈りつつ

やがて 風にとけ込み
山にしみ込み
聞こえることのない
音色となるが
別れた後も
いつまでもある山歩人の記憶
心の中で
鳴り続ける鈴の音色が 


2000年9月6日  緑岳にて

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