19 青空の滴の花


無意根山に登ったときのことです。感動したのは山道に咲くリンドウでした。秋の青空に劣らず、真っ青でした。
しかし、花弁を開いた花は遂に、見ることはありませんでした。            

青空の滴(しずく) それはリンドウ
青い花は青空の滴の証(あかし)
花でないことを悟られないよう 
決して花を咲かせようとはしない

青空の滴が空に帰る時
それは 白い雲をちぎる時
その時につぼみをわずかに開き
青空の滴は空に返える

キンヤンマ オニヤンマが
青空の滴を運ぶ
自らの目にその滴をためて
飛びながら 秋の空を青く染める

青空の滴を放出した花は
また つぼみとなり
つぼみのままで枯れて行く
青さが抜けて枯れて行く


2000年8月20日  無意根山にて

決して、リンドウの花を手で広げたり、花の中を覗いたりしないでね。そんなことすると、悲しんで、雨になりますよ。

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