190 氷光の滝

 穴滝へ行ったときのことです。滝は半分凍っていましたが、氷のクリスタルの中で音も無く落下していました。


氷のクルスタルの中で
囚われの身のように 無口で
それでいて 光り輝き
氷の滝の中を下り落ちる光

いや それは母に抱かれた
乳飲み子のように 安心しきって
きらきら目を輝かせて
母の顔を見上げている
姿なのかもしれない

光が氷の滝の中を落ちるように
水滴もまた 氷のクリスタルを伝わり
光り輝きながら
光の後を追う

水滴は 光と見間違うように
光り輝き 音も無く滑り落ちる
水か光か 光か水か
氷のクリスタルの中で
透明にきらきらと輝き競う

それは 暗黒の大地の底に
暗黒の光として降り注ぐ
光の滝のよう

それは 大地が早春の息吹を
一気に爆発させるために
貯えているかのように思える


2006年12月16日 穴滝にて

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