189 氷の滑り台

  剣山に登ったときのことです。一枚の大きな岩に流れ落ちた水が凍っていました。それは滑り台のように光って、滑りそうでした。
   


初雪が融けて流れて凍り付き
   岩の上に氷の滑り台が現れた
   光はするすると滑り下りるが
   直ぐに キラキラ光って また登る
   
   熊さんが滑れば幅が狭いので
   きっと足を擦り剥くだろう
   リスさんが滑れば
   枯れ葉に載って滑り下りるだろう
   狐さんが滑れば
   スノーボーダーのように
   格好良く滑り下りるだろう
   
   風が滑り下りれば 里は凍える
   木枯らしになるだろう
   粉雪が滑り下りれば 里は白い
   雪の野原になるだろう
   
   春の日の麗らかな里になるには
   まだまだ 遠い道
   花咲く 里になるには
   まだまだ 遠い道
   
なのに
小春日和の山道を辿っていると
直ぐ来る 冬を忘れそう
   

2006年11月3日 剣山にて

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