177 雫のような鹿

佐主岳に登ったときのことです。帰りの林道で鹿に合いました。鹿は車を見て林道から笹薮へ飛び跳ねて逃げて行きました。

二匹のエゾシカが
遊んでいた
道の真ん中で
遊んでいた

目が合うと 二匹は
互いに 顔を見合わせ
呼吸を合わせて
飛び散った
道の真ん中で
飛び散った

瞬きしたら 消えていた
道の上には
何も無かったかのように
木々の影が差して
揺れていた

それは まるで 水面に
水滴が落ちたかのように
自然に染み込み
残像だけが踊っている

笹薮は今でも揺れている


2004年10月23日 佐主岳にて
アイヌの人たちにとって鹿は貴重な食料でした。捕らえて殺す時は神に感謝して許しを得ていましたが、今は、あまりに増えすぎて駆除対象となってしまいました。森や農業を守るためには仕方がないことと考えますが、ただ、害獣として感謝の気持ちもなく命を取ることのみに専念するハンターがいたとしたら、悲しいことです。

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