178 首無しの木

砥石山に登った時のことです。今年は台風でどの山も木々が千切れていますが、特に、酷いところがありました。まるで、首を千切られたようでした。

風は色々なものを
運んでは置いて行く
春には 花の香り
秋には 果実の香り
を残して通り去る

四季折々に吹く風は
夏には 暑く
冬には 寒く
時には 心地よく
心の中まで 吹き抜ける

時には 優しく木々を
揺れ動かす風も
荒々しく 吹き荒び
木々の首を千切り取る
同じ風とは思えない風になる

優しい心を持った人々も
神や正義の名の下に
血みどろになり 殺し合い
果てしなく 憎悪を募らせる
人も風にまた同じよう

木々は為されるがまま
全てを受け入れ
未来を信じて 朽ち果てる


2004年11月14日 砥石山にて

木は静かに朽ちても、その後に、茸が生えたり、次世代の木の養分になるのですが、動物として生まれながらに闘争本能を持った人間は見習うところがあるかもしれません。

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