165 悪戯妖精の楽器

標津岳へ登った時のことです。霧雨で草木が濡れていました。草木に触れる度に衣服が濡れて、靴の中までずぶ濡れになりました。

体に生まれたての露が付く
たった今 空に漂っていた水
露と霧の間のような水
その水を 草木が受け止めた

ズボンに沁みる
シャツに沁みる
沁みた水が体を伝わり
靴の中に入る

すると 靴が鳴り出す
グジュー グジュー シュー
と靴が鳴る

歩くたびに 勝手に靴が鳴る
グジュー グジュー シュー
と靴が鳴る

それは悪戯坊主の楽器
悪戯坊主の妖精は
私を濡らし 歩かせ 走らせ
音を変えて 遊ぶ


2003年7月19日 標津岳にて


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