114 春合唱

小喜茂別岳に登ったときのことです。雪は硬く締まって、スキーで滑ると音がしました。沢の雪はぽっかり穴があいていました。まるで、春の歌を大声で歌っている口のようでした。

吹雪が止み 青空になると
白い雲は 慌しく
暖かそうに体を膨らませて
春を運んでくる
それを見て 雪を被リ直した
山々はゆっくり顔を出す

青空の下で
まだ新雪の残る頂上から
二本のシュプールが
白樺の若木林をぬけ
日の光が満ちた
硬雪の斜面に伸びるとき
雪殻は砕け散る
クラストは春の歌を歌う
カラカラ カラカラ歌う歌

沢はまだまだ雪の下
けれど 雪の下には春がある
雪が融けて流れてる
サワサワ サワサワ歌う歌
大きな口で歌う歌 春の歌

木々は何処かへ雪を運ぶ
鳥の形をした雪だるまから
もうすぐ 渡り鳥が生まれそう
喜茂別川もサラサラ歌ってる
みんなで みんなで歌う歌
春の歌 大きな口して歌う歌


2002年3月16日 小喜茂別岳にて


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