113 風と日光

塩谷丸山に登ったときのことです。気温は春のように高く、風の強い日でした。頂上付近はさらに風が強く、地吹雪状態で、クラストした雪や小枝を吹き飛ばしていました。山の斜面は風で飛ばされた雪が転がって、バウムクーヘンがいっぱいでした。

春と冬の風が
雪に戯れる
春の風は雪を湿らせ
冬の風は雪を蹴散らす
雪はゴロゴロと斜面を下る

まるで バウムクーヘンのように
丸く 更に大きくなって
中に 日の光を巻きながら
やがて 風から逃れて一休み

日が陰ると
巻かれていた日の光は
慌てて 出て行く
日が照ると また
自分の家のように
キラキラ光って 帰って来る

風に落とされた小枝は羨ましそうに
それを見て 林の雪の上にいる
春まで 冷たい雪の上にいる
もう 戻ることの無い幹の下

日の光は 林の中までやって来て
そっと落ちた小枝を暖める
木々の葉が茂るまで

2002年3月9日 塩谷丸山にて


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