31 へびと一輪の花


塩谷丸山に登ったときのことです。岩場でへびさんと一輪の可愛い花に出会いました。私はへびの名前も花の名前も知りません。聞くのを忘れました。

へびが守る一輪の花がある
登山者(ひと)が近づくと 寂しそうな顔で
岩の間から出てきて 行く手をさえぎる
自らの身体(からだ)を精一杯伸ばして

へびがなぜ守るのか 一輪の花を
登山道(みち)の岩と岩の間隙で咲く花
その花はピンクで菊の様
小さな 小さな背丈で 精一杯咲く花

その花はへびを見上げて
小さな 小さな背丈を 精一杯伸ばして
可愛い 可愛い顔を 向けて
踏まれずに済んだ お礼を言う ありがとうと

へびが一生懸命守っている一輪の花
可愛い 可愛い顔で 咲いていた花も
やがて 枯れる時が来るのを知ってか
へびの顔が曇りがち もうすぐ泣いても良いくらい
 
踏まれずに済んだ花はへびに言う
私の身体はこの山なんだ
また 枯れてもまた この山に咲くよ
この山がある限り いつまでも
へびさんこの山を離れないでねと


2000年9月18日  塩谷丸山にて

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