155 透輝氷

大滝村の百畳敷洞窟へ行ったときのことです。洞窟の中にはいろいろな形をした氷筍がありました。氷筍はムーミンのニョロニョロに似ているようです。    

天から降り下りた
水色の雨や純白の雪が
暗黒の大地へ吸い込まれる

輝きも 透明さも期待されず
ただ 奈落の底へ
落ちたかに見えた水が
洞窟で 蘇る

土に染み込み
一度は濁った水が
大地の嘆きを洗い流し
透明の輝きを取り戻す

透明の輝きを増した水は
自らの体を凍らせ
洞窟の天井や地面から
ニョキニョキと顔を出す

地面を透明に覆い
頭を右に左に動かし
思い思いの姿で
天に帰ろうとするが
願いは叶わず

春になると 融けて
川の流れの 音となる
春の芽吹きの 色となる
儚い調べ 春の調べに


2003年2月8日 百畳敷洞窟にて




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