81 大地の海 


オダッシュ山に登ったのですが、雲海が綺麗でした。雲海という意味がわかったような気がします。その雲が突然透明になるのがなんとも不安でした。
 

人は見上げるときには雲と呼び
足の下にあるときには雲海と呼ぶのか
雲海は山々の高さを消し去り
頂上にあっても
あたかも 波間の岩の上に居るかのごとき
錯覚を与える

雲海の波は静かで
寄せては帰すことは無く
ただ 打ち寄せるのみ
また 潮騒も 潮の香も 無いが
小鳥は歌い カエルは跳び跳ね
木々の甘い香りに蝶は舞う

雲海は自らの消え去る時を悟る
あたかも お湯が温かった時のくず湯か
春の日の雪解け残りの雪のように
突然 白さを残して透明に変わる

私は山頂に取り残され
山の高さを知り めまいを感じる
雲海はすでに青空に融け込み
青空を霞すめる
山々はまた 高々と背伸びを始める


2001年7月29日 オダッシュ山にて



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