57 白鱗の竜


青山を白川からスキーで歩いて登ったときのことです。深雪をラッセルすること約1時間半、ようやく痩せ尾根に辿り着きました。そこには子供の雪庇が生まれていました。見ようによっては小さな雪の波とも、竜の背中の鱗ともみえました。その時、一瞬、地吹雪が起こりました。  

子供の雪庇が生まれてる
痩せ尾根に 小さな 小さな
可愛い 可愛い 形して
小波のように 寄り合って
日差しを受けて笑ってる
きらきらきらと笑ってる

可愛い雪庇にスキーの先が
触れたら すぐに 地吹雪が
そして 痩せた長い尾根が動き出す
ゆっくり ゆっくり動き出す
すると 雪庇が竜の白鱗に
竜が現れ のたうち回る

大空高く舞ったよう
竜が雪を巻き上げる
白い鱗が雪の糸を引く
体に刺さり 突き抜ける
冷たい 冷たい 風穴が
冷たいようで ぬくもりが
大地の体温を感じつつ
天と地の狭間を彷徨(さまよ)う二人


2001年2月4日 青山にて

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