51 北の大地の巣箱の中から


藤野マナスルはすごい山と誤解される名前ですが、丘のように低い山です。地元の小学生が小鳥の巣箱を設置したり、小鳥に囁きかけるように、歌を書いた板の短冊が木に括り付けています。その内容が、なんとまあ、純真でそれを見ると私は恥ずかしくなりました。
             
候鳥(渡り鳥)はもういない
巣箱に打ち付けるマタレラが鳴らす
巣箱の穴の口笛が
小鳥に代わり口ずさむ
ピュー ピュー ボー ボーと

純朴な短冊代わりの木の板が
木々にぶら下って遊んでいる
その板に 無垢な子供の歌が綴っている
しかし マタレラに吹かれ 震えて
その子供の歌から声がない

木々が小枝を振りながら
木の葉が落ちた小枝を叩きあい
小鳥のさえずりを真似しようと思っても
ただ ヒュー ヒュー ヒューと
マタレラが通り過ぎ去る

落ち葉の音も小鳥の声には程遠い
ウパスも舞いはするが
小鳥のような声は聞こえてこない
北の大地の巣箱の中に
小鳥の忘れ物か また来るための目印か
風に産毛が震えて 見えるよう


2000年11月25日 藤野マナスルにて

      マタレラ      冬の風
      ウパス       雪
      候鳥(こうちょう) 渡り鳥       

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