46 新雪の登山道


ペケレベツ岳に登ったときのことです。山は初冬の装いでした。よそ者を受け入れない、厳しい顔をしていました。二人のオフミにしてはあまりににも悲しい登山でした。雪ははい松の上に樹氷のごとくへばり付き、容赦なく頭の上に落下してきました。      

新雪にフォックストロットの足跡が続き
鹿の足跡が交差する登山道
その道をちっぽけな人間が二人
踏みしめる落ち葉もすでに無く
新雪を踏みしめながら登る道

時折 小雪が舞い 強風が吹き荒み
すでに舞う木々の葉音は無く
木々の悲鳴があるのみ
強風が岩々の間隙を吹き抜け
岩や木々の悲鳴を聞きながら登る道
白く化粧を施した登山道を二人して

天空を見上げれば
山並を挟んで青空と雪雲がぶつかり合う
狭間の世界 北風が吹き抜け
すでに木々の葉は音を立てず
小雪がヒューヒューと舞い
強風が吹き荒ぶのみ

山は白雪のマントをまとい
まるで マントの袖のように
はい松の雪のトンネルを従える
そのトンネルを
ちっぽけな人間二人は頭を垂れ
山に忠誠を誓うかの如く
雪まみれになって登る登山道
何を求めて登るのか
何のために登るのか


2000年10月29日  ペケレベツ岳にて

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