41 筏の残像


札幌で暮らしていた人なら一回は空沼岳に行ったことがあるのではないでしょうか。その空沼に万計沼があり、不安定な筏が浮いていて、この筏に乗って遊んだことがあります。
今は浮いてないので、どうしたのかなと思っていたら、山メール仲間の安立尚雅氏が、真相を教えてくれました。
その、真相とは                

水面に何かが弾けた音がした
波紋が水面をゆっくりと歩いて行く
対岸の朽木の傍へと迫り行く
フンペの肋骨の様な朽木に

波紋が ゆっくり ゆっくり戻り来て
時がゆっくり戻り行く
友の声がこだまする
青春時代の懐かしき時へと

万計沼に ゆっくり漕ぎし筏あり
筏が右に左に揺れ動く
前に後ろに揺れ動く
オールを漕ぐたび 揺れ動く
楽しい一時もあったのに

筏の悲話が隠れていたなんて
楽しいはずの一瞬に
沈んだ命があったなんて
沼は楽しみも 悲しみも
静寂の中にしまい込む

今はない 筏の姿
あの時と同じ万計沼が静かにあるのに
何時も あると思ってた
朽木も朽ちていないのに
何時でも 何時までも あると思っていた


2000年10月16日  自宅にて
昔あった筏に乗って遊ぶ友二人空沼岳から札幌岳縦走時(およそ40年前)

そういえば、万計荘も建て替えましたね。


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