35 トンボの絵の具遊び


芽室岳に登ったときのことです。朝焼けが綺麗でした。登っている最中も、押し寄せる雲がなんともいわれずいたずら坊主だったのです。
しかし、肝心のトンボさんに出会えず、詩を作ることができないでいたのです。そこに安立さんがヤマブドウを採ってきて、潰している姿を想像して、居ても立っても居られず詩にしてみました。           

あの雲は
どんな絵の具で描いたのかな
真っ赤な 真っ赤な
ナナカマドの実でも潰したのかな
それとも
赤く熟した 熊さん好みの
ヤマブドウでも潰したのかな
どこかのいたずら坊主さん

あの雲は
どんな絵筆で描いたのかな
青空に 細く 長く
どうして描けたのかな
何本も 何本も
どうして描けたのかな
ススキの穂でも筆にしたのかな
どこかのいたずら坊主さん

あの雲は
誰が書いたのかな
なんという字を書いたのかな
どうしてウェーブが付いたのかな
絵筆が短く 届かなかったのかな
だれに見せようと思ったのかな
いたずら坊主のトンボさん

青空を
だれが真っ白にしたのかな
どうして どうして
一度に 急に 塗れたのかな
どんな絵筆を使ったのかな
絵の具で真っ赤なトンボさん
真っ赤な 真っ赤な トンボさん


2000年10月3日  芽室岳と自宅にて

トンボを安立さんにすると、ヤマブドウで真っ赤になった手や、南暑寒別岳のあの空をいっぺんに真っ白にした、犯人がわかったような気がする。
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