182 ルピナスの雫

冷水山に登ったときのことです。まだ、ルピナスの花は咲いていませんでしたが、輪生した葉の中心に朝露が溜まって、日に照らされて輝いていました。まるで、宝石の輝きがありましたが、それはまた、目から溢れようとしている涙の粒のようでもありました。

ルピナスの輪葉に抱かれ
揺ら揺らと 風に揺れる
透き通った水の粒
それは 母に抱かれた
稚児の目の様に 安らかだ

この透き通った水の粒も
漂う霧から生まれたか
幾千万の悲しみで
溢れた涙の粒なのか

今にも 零れ落ちそうに
光り輝き 風に揺れ
光りを通し 風に揺れ
光りの色を 照り返す

悲しみ溢れる 雫なのか
喜び溢れる 雫なのか
それは 零れ落ち
人の心に 染みて知る
涙で咲く花 ルピナスの雫


2005年5月29日 冷水山にて    





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