131 マリモ物語


雄阿寒岳に登った時のことです。針葉樹の暗い森の中は、岩や朽木に苔が生していました。岩穴にはまだ雪があり、小雨が降れば鬱蒼とした暗い森なのにすぐに岩を濡らすのです。

シカントを遮蔽するニタイ
それでいて
ラコロペを地上に落とす
岩たちを濡らし
苔生す岩にするためか

過ぎ去った冬の日に
白雪を受け入れたのか
岩穴にウパスを匿いもする

木々は生を忘れ
朽ちて 静かに 横たわる
苔はそっと 朽木を包む

朽木が久遠の時を過すとき
土となり自然に帰る
土と化した朽木と共に苔は流され
阿寒湖の湖底に沈む

久遠の時を森で過した苔は
森の歌を歌うが
太陽の歌は知らない

木々たちが太陽の歌を歌うと
霧は晴れて 湖面に波と光が現れる
歌に合せて 水に身を任せると
苔は 丸い 丸い マリモとなる

カパシュエップは森を泳ぐと
丸い 丸い マリモは想う
オヤモッテ オヤモッテ


2002年6月15日  雄阿寒岳にて
実際には苔は苔で、マリモにはなりませんが、そんな気がしたのです。
シカント
ラコロペ
ニタイ
ウパス
カパシュエップ
オヤモッテ
天空
細雨
森林

姫マス
不思議だ

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