120 明と暗の林    

丹沢山から塔ノ岳に登ったときのことです。最初は爽やかな本谷川のせらぎを聞きながら林道を登って行くのです。登山口近くから見る丹沢山は急峻な山容で威圧するかのようでした。
何時も思うのですが杉林は暗くて好きではありませんが、広葉樹林が一段と明るく感じます。


本谷川のせせらぎが
大きな岩を撫でながら
流れている様を見ていると
時は止まり
音だけが流れ去る

川面の光は
わが薄弱な正体を
見透かしたように
身体を通り抜ける
なにも無かったかのように

急峻な山は未だ
よそよそしく 
われわれを受け入れず
しかし 一歩一歩登る毎に
しだいに 山は打ち解けて
われわれを山頂に導く

明と暗の林を登り行くと
桜や馬酔木が顔を出す
木道は空虚な音をだし
頂上が近いことを告げる

花は友となり 顔を向ける
山々もおもむろに頭をもたげる
われわれは山と同化し
山に遊ぶが
花が孫の顔となるのか
急ぎ足で 下る グランママ
鹿は驚いて飛び跳ねる


2002年4月17日 丹沢山・塔ノ岳にて


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