111 ゴーグルの涙

稲穂嶺に登ったときのことです。天気は余り良くなかったのですが、頭の上には青空がありました。山頂からの景色にも大変満足しました。時折風が強く吹き辺りが白くなり、まるで、冷たい白いベールを被せられたような感じもしました。しかし、木の芽が春を感じているようです。

さらさらと さらさらと
雪の上を流れる 流れ雪
風の筋に入り込んだ 流れ雪
風の形を現し 流れ
風の音を残し 流れ去る

流れ雪は北風のひと吹きで
青空の雲まで舞い上がり
一段と 雲の白さを増すが
北風に忍び込んだ
春風に翻弄され 翼を失う

飛べなくなった流れ雪は
白いベールとなり
地上に降り戻るとき
わが体は 冷たく包み込まれる

ゴーグルは濡れ
眼から流れ出もしない涙が
悲しくもないのに頬を伝う
流れ雪の運命を
嘆けというのか

春の日の足音を聞かす
木々の芽 芽の膨らみが


2002年2月24日 稲穂嶺にて


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