91 リンドウの咲く尾根道

カムイヌプリから室蘭岳を縦走したときのことです。尾根道に○○先生の追悼の碑があり、その付近にリンドウが咲いていました。

初冬にはまだ早い
晩秋の尾根道に
青紫の花
リンドウがまだ咲いている

歩くたびにリンドウが揺れるが
花弁は決して散らさず
何かを書いているような仕草で
ただ 揺れるだけの花

いや 絵筆のように動いてる
青空に向かって 雲に 向かって
何を描いてるのだろう
今年の思い出なんだろうか

そのとき 透き通った風が吹き抜ける
リンドウは葉を振って合図している
なにかを運んでもらいたいのだろうか
今年の思い出だろうか

もう リンドウに聞いてもわからない
描き終わったリンドウは
青紫色を使い果たし枯れている

リンドウの咲く尾根道を歩くとき
空は大地よりも広くなる
時折 風が雲を連れてくる
リンドウが描いた雲なのだろうか


2001年9月24日 カムイヌプリにて


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