58 スポットライト札幌の街


奥三角山を小別沢からスキーで歩いて登ったときのことです。
シールを付けていても真っ直ぐ登ることが出来ず、ようやく痩せ尾根に辿り着きました。雪の風紋と鹿の足跡のある斜面を登りきると、そこにはスポットライトを浴びた札幌の街がありました。

雪の風紋 それは
寒風のレコーダ
凍った粉雪で書いた声
風が何かを書く度に
形を変え 話しかける
話しかけられる度に 寒くなる
耳元が凍るほど 冷たくなる

鹿がそれをなぞったように
足跡が雪の風紋に残っている
何と聞こえたのだろうか
鹿に導かれるように
急斜面をあえぎながら登ると
頂上だった

そこからは札幌の街が
ぽっかりと夕日を浴びていた
まるでスポットライトが
当たっているように
丸く明るい街が移動する
色を変えて移動する

移動する度に
ビルの名前を当て遊び
やあ 小さくなったテレビ塔
目立ちたがりやのNTT
遠くに 百年記念塔
まるで青春時代が見えるよう


2001年2月11日 奥三角山にて

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