52 新雪の足跡


三菱山はもうスキーヤーの世界でしたが、ゲレンデの裏はまだ、散歩している人もいました。
しかし、犬を散歩させている人のマナーが悪いのにはがっかりしました。なぜかっていうと、雪の上、しかも、林道の真ん中に糞が放置してありました。来年その上を歩く人が踏むと楽しいはずの登山が台無しになりますよね。
人の行かない方の林道を行くと、そこは、楽しい世界でした。    

新雪に
まだ だれにも踏まれたことのない
新雪と思ったら
もうすでに 足音のしない足跡を
残して行ったものたちが
鹿の 狐の 兎の 足跡が
くっきり浮かぶ
初冬の晴れた 夕暮れの時

狐の足跡は一直線に
行きも 帰りも乱れずに
同じ足跡を辿り来て 辿り行く
突然 足跡が枝分かれ
全く 綺麗に 枝分かれ
初冬の晴れた 夕暮れの時も

鹿の足跡は
跳んで 跳んで 跳びまくる
何から 逃れたかったのか
焦ってる 深い深い足跡を残してる
初冬の晴れた 夕暮れの時もある

兎は何処へ どう行ったやら
あちらと思えば また 此処にも
可愛い 可愛い 足跡が
雪の上で遊んでる
初冬の晴れた 夕暮れの時もある

われらの足跡を振り返れば
何とも言えない不自然さ
底まで日が射さない 深い足跡が
自然の中にとけ込めもせず
自然の中からはみ出している
そんな初冬の 晴れた夕暮れ時もある


2000年12月9日 三菱山にて

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