206 雪影の月
雪の稲穂峠をスキーで辿っているときのことです。動物さえ足跡を付けていない新雪がうねり、その中から三日月が顔をだしていました。

吹雪が吹き荒れた朝
真っ白な新雪に
陽の光が落ちるとき
夜と昼の境が薄弱になる

混濁した時空に
三日月が現れ
夜路ではないと悟り
消えて行く

寝ぼけた時空には
未だ 動物の足跡もなく
時の流れた跡を
雪の起伏として残すのか

雪を踏み締めると
足跡という現実が現れ
時空は足元に留まるが
振り向く足跡は
既に過去のもの

踏み出す未来は
何処だろう

2010年1月19日 稲穂峠にて

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