188 さざれ雪

 雄鉾岳に登った時のことです。ルンゼから飛び出るとそこは、別天地で目の前に日本海が広がっていました。日本海からは冷たい風が吹いてきて頬を刺しました。そして、小さな雪が光って舞っていました。


日本海から吹上げる風は
ヒューヒューと音は立てずに
ゆっくりと ゆっくりと
冷たさだけを乗せている
   
冷たい風の隙間から
まだ 見えない位
小さな 小さな 生まれたての
さざれ雪が顔を出す

顔を出しては
キラキラと目を光らせ
冬には遠いと また
風の隙間に消えて行く
   
それでも さざれ雪は
木々の隙間に 宿りだし
   岩の隙間に 滲み込んで
   冬の来るのを待ちわびる
   
山男も 心温かに
さざれ雪が 吹雪になって
冬笛を吹くのを待ちわびる


2006年10月21日 雄鉾岳にて

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