174 気泡の冬魚

ピンネシリに登った時のことです。下りは舗装された作業道を下ったのですが、残雪が道を覆っていました。残雪の縁は透き通った氷になり、その下で、気泡が魚のように流れていました。

残雪に 冬が宿っていても
花の咲く 春の日には
少しづつ 冬が逃げて行く

残雪が 融けだすと
残雪の縁が 透き通り
雪に宿っていた 冬の空気が
気泡となり 流れて下る

それは 小魚にも似て
素早く泳いだり 留まったり
まるで 生きているようだ

融け出た水は
冬を気泡の魚に変え
曲を奏でて
冬の故郷に送り出し
春の花を呼ぶのか

黄色い 黄色い
ヤチブキの花を


2004年5月30日 ピンネシリにて

山の詩もくじへ  次暗黒の光ヘ   北の山遊詩へ