160 雪庇の雷

北白老岳に登ったときのことです。尾根には雪庇が発達していて、その雪庇がスフインクスや人の顔、動物の顔にも見えました。雪庇に近づきすぎると、ストックを突いただけで、ひび割れがして鈍い音とともに沈みました。

風は雪を削る
その音は
ヒューヒューと鳴り
わが胸を通り過ぎる

削られた雪の粉は
サラサラと吹かれ
白糸の様に 霞みの様に
尾根から食み出す

風に乗って来た精霊なのか
尾根に宿っている精霊か
透明な筈の精霊に
雪が付着すると
精霊の形が顕になる

精霊は知ってか 知らずか
顕になった姿を気にせず
真剣に何を見ているのか
何を考えているのか

問い掛けても
答えようとはしない
春間近かの
雪精達の憂鬱なのか

近づくと音を立て
雷を雪の上に描き
威嚇する


2003年3月22日北白老岳にて




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