145 黒い光


ワイスホルンに登ったときのことです。厚い雲が押し寄せてきて、太陽は雲の合間から光る程度でしたが、それでも、紅葉は綺麗でした。

厚い雲が山々を覆いだすと
風が雲を追いやるが
厚い雲は少し途切れるだけ
次から次へと山の頂きを削る

雲たちが山々の頂を削り去るとき
白かった雲は 重苦しい黒になり
陽の光をもてあそぶ

山肌の紅葉は
途切れ途切れの陽の下で
黄色く光り 赤く光るかと思えば
黒い光の下で 沈黙する

太陽は寝ぼけて地上を照らすが
雲は陽の光を締め付けて
細く 長く 切り裂く
陽の光は たまらずうごめく
まるで 紫ウニの足のように


2002年10月5日 ワイスホルンにて


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