142 シラタマの白い道


三段山に登ったときのことです。登る前に、九条武子の歌碑を見に行きました。その道は白いシラタマが多く、所々にリンドウの青い花が相変わらず、開かないうちに半分枯れていました。

シラタマの白い実に誘われて
ゴツゴツとした岩肌を登ると
可愛い声が聞こえてくる
可愛い流れが見えてくる

ニコニコ キラキラ 笑って
岩山を削りながら流れてる
まだ 生まれたての
小さな流れ 富良野川
源を辿れば白い煙の
大きな山 十勝岳

十勝岳の白い噴煙は
青空に吹き上がる
青空の精 リンドウは苦しそう
青いリンドウは蕾のままで
白い煙に負けて枯れて行く

リンドウの青さが消えないよう
シラタマが一生懸命
白煙を実に閉じ込めている
小川は励し 歌を歌うと
シラタマが白く揺れる 揺れ動く


2002年9月16日 富良野川源流にて

吹上温泉から望岳台へ向かって30分くらい行くと、富良野川があり、それを渡った最初の尾根の上に、昭和24年7月に建てられた歌碑がある。歌碑には「たまゆらの烟をさめて静かなる山にかへれば見るにしたしも」と書かれていた。
 この一首は大正15年5月に起きた十勝岳大爆発の翌年の夏に、九条武子が十勝岳の山容を望んで詠んだと言われ、歌集「薫染(くんぜん)」収載されている。


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