137 三平皿の欠片


泥川砂山に上がったときのことです。まだ明けきらない空に月が出ています。月を見ているとなぜか、涙が滲んできます。それからおもむろに水平線から太陽が出てきたのです。思わず、みんなを叩きお越し、見せました。砂浜にはきらりと光るものが?

泥川の壊れた橋の上
白々と明けかけの
すでに青い空
涙の中に
白い月がいびつに浮いてた

涙をポロリと落とすと
川面に 月の光が流れていった
眠りついてる者たちを
起さないように 音も無く
鉛の様に 流れてた

不恰好な太陽は
弾みながら
水平線から食み出した
すると 丸く 大きく 生まれ変わった
波も目覚めて 音をだす

真っ赤に染まった浜辺には
三平皿の欠片(かけら)が光ってた
花田の番屋の直ぐ傍に
波に幾千回も洗われた
小さな 小さな 欠片でも
消え去ることの多い中
染み込んだ昔の面影が見えていた

だれが割ったか 三平皿
どんな味がしたのか 三平汁
みんなの舌には残っている


2002年7月28日 泥川砂山にて
57年前に厚谷(佐藤)洋子さんが泥川を脱出する時に見た太陽にはおよばなかったかもしれませんが綺麗でした。時を越えて、同じ時間を共有した気持ちになりました。
三平皿の欠片は1つだったので、一人で来た人にプレゼントしました。

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