108 狸寝入りの雪だるま

つげ山に行ったときのことです。登る尾根を間違えて頂上に行くことができませんでした。尾根の取り付きのところには、大きな雪だるまが寝ていました。

清流に雪の橋が架かるところ
そこは山への入り口 誘い道
丸い丸い雪だるまが寝ている枕元
そっと起こさず通り過ぎ
越えて行くと尾根がある

尾根は頂上への誘い道
青空は白い雲を散らばせ
木々に雪の飾りを付け
白い雪の絨毯を敷き詰めた
誘い道 迷い道

白い雪の絨毯は
ストックを刺す度に
生き物のように呻く
ギューッ ギューッと呻く
痛い 痛いと言っているよう

この道も山の上で
崖が立ちはだかり
通せんぼ 右も左も 崖と崖
頭は尖って 木の髪が

帰りがけ 小さな目を開けて
狸寝入りの雪だるまが
にっこり笑って 見送った
知らない振りをしていたよう


2002年1月26日 つげ山にて

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