162 コンコンと鳴くカラス

阿女鱒岳に登ったときのことです。林道の路傍にキツネが死んでいました。帰りには、そのキツネをカラスがついばんでいました。悲しいですが、これも自然の摂理なのでしょうか。

私はキツネ 野のキツネ
たった今まで駆けていた

その証拠は 雪の上にある
綺麗に辿った一直線の足跡さ

その足跡も ここで終わりさ
もう 動けない
声も擦れて 目も霞む

熊さんも探し歩いて
心配してくれたが
私はもう直ぐ 肉の塊だ

悲しいけれど自然の掟
少しも残らず食べて欲しい

一番食べたカラスの体に宿って
空を飛び コンコンと鳴いてやる


2003年4月5日 阿女鱒岳にて
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