109 雪の三角象

南岳に行ったときのことです。時間がなくて頂上までは行けませんでしたが、奥手稲とのコルにようやく辿り着くと、雪の三角形をした象が迎えれくれました。そこの風景はシンプルそのもので、市街は全く見えず、正面に白波の綺麗な石狩浜、左に銭函天狗岳、右に石狩湾新港が見えるだけでした。

青い海と
白い大地に挟まれた
白波で描いたノの字と
ノの字の黒いオタ
そこは石狩川の出口
コタンカラカムイの
仕上げの一筆(ひとふで)
親指の痕跡(あと)

石狩浜から
手の様に伸びている防波堤
青い海を取り込む様に
書き加えられた
人による一筆の落書き

青空の太陽を浴び
白い大地から現れた
三角の形をした雪の象か
長い鼻を丸め
左手に筆を持ち
笑って 笑う 大地の絵師

人が大地に画いた
下手な落書きを
掻き消すのか
市街地は既に無い


2002年2月3日 南岳にて
コタンカラカムイはアイヌの国土創造神で、大地に川筋を親指で描いたと言われています。


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