9 岩山の二人


美瑛富士に登ったときのことです。林道でカメラのケースを偶然拾ったことがありました。AOIさんのご主人のケースだったのです。
また、その日、石垣山に登っている二人の姿を遠目で眺めてもいました。時間的に考えれば、AOIさんだったのではと思っています。物理的にはこんな遭遇でした。

美瑛富士と石垣山に挟まれた沢に
真っ青な小さな花が咲き乱れる季節
美瑛富士の避難小屋から団欒の
話し声が聞こえてくる夏山
そんな夏山のひと時
一つの出会い

空は霧に支配されまぶしくは輝かず
山々は静寂に支配され
荒い息の音は かき消され
山の音にはならず
清風は 山霧を従えて
清々しく肺を満たす

目の前の岩山をゆっくりゆっくり
登って行く二人連れ
目を凝らすが 美顔は見えず
耳を澄ますが 足音は聞こえず
ただ背中を向けた二人であるのみ

われわれと辿る道は異なり
追いつけもせず 声もかけられない
ただ 離れ去るのみの
永久に離れさるのか 一時なのか
われわれは知らない
一つの別れ


2001年3月1日 自宅にて

この度、突然のお別れですが、宇都宮に行っても、たくさん山はあります。楽しんでください。
日光の庚申草山に行くことがあれば、庚申草がまだあったか教えてください。
また、山メールでは随分お世話になりました。私の詩も見て下さったのも嬉しいことでした。始めは随分変わった人がいるものだと思いました。しかし、私の作った詩を見ていてくれる人がいると思ったら作る勇気が沸いてきたのでした。ありがとう。お元気で!


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