5 春の曲


百松沢山は雪庇が崩壊するなど、雪解けが進んでいるようです。
雪の下では水の流れる音も聞こえていました。花も少ないですが咲き始めました。鳥の鳴き声も聞こえています。

サンラマントモシリ(北国)のヌプリ(山)も
ウパス(雪)が融け出しました
ウパスに埋もれていた音も鳴り出しました
ウパスの下では もう ポンペツ(小川)が生まれています
サワ サワ サワと聞こえてきます
大きなあくびをしながら
トプ(笹)や小枝が起きだしました
バサ バサ バサと聞こえてきます

長く白い雪庇はピアノの鍵盤の様です
パイカラ(春)の妖精が盛んに叩いています
所々雪庇の鍵盤が下がっています
パイカラの曲を奏でているからなのでしょうか
エンレイソウは指揮者気取りで
葉を振って春の曲を盛り立てています
エゾエンゴサクは小さな口を開け
みんなで 春の歌を合唱しています
パイカラレラ(春風)が歌声を集めています

もう シルバーザッテルは白くはありません
ウパスニス(雪雲)は船団を組み
暖かさに堪えきれず 去ってしまいました
何所かで 慌てたウパスニスの船団が
リイヌプリ(高い山)にぶつかり
ウプンコロレラ(吹雪)を起こした便りも聞こえてきます

ほとんどのウパスニスはパイカラの暖かさに負けて
ポンウパス(小雪)をちらつかせ息絶えます
ポンウパスは一粒の露となり
草や木の芽に忍び込みます
そのうち 草や木の花弁は
ポンウパスが化身した白い花弁となることでしょう

パイカラレラの歌声にポポチリ(ウグイス)もつられて鳴いています
草や木の芽は春を感じて顔をだします
ネコヤナギは銀色のマントを脱ぎ捨て
小さな葉っぱになって
草や木の芽の出るのを誘っています
マカヨ(フキノトウ)も チライアパッポ(福寿草)も
パイカラの歌を歌っています
雪解け水はさらに大きな声をだしています
どんどん どんどん パイカラだ パイカラだと
いっているのでしょうか


2001年4月29日 百松沢山にて


大地の詩もくじへ  次二つの落日へ  北の山遊詩へ