城ヶ倉渓流は、十和田国立公園、八甲田山系の大
岳、櫛ケ峰、駒ケ峰に源を発して、陸奥湾に注ぐ2
級河川堤川(流域面積278.9km、流路延長32.
6km)の上流部、河口より約22.8km、下湯ダ
ムに位置する北八甲田屈指の渓流である。
城ヶ倉の地名は、古くは「嫦娥倉」といわれてお
り、嫦娥は「月」、倉は「崖」という意味で、この
渓谷の厳しい自然美を端的に表現しており、断崖や
奇岩、怪岩にせかれてほとばしる川の流れは、男性
的かつ野性的な躍動美にあふれている。
大正11年8月18日この地を探勝した明治、大
正期の文人大町桂月は、渓流の美しさを紀
行文「花の八甲田山」の中で、賞賛すると共に「
嫦娥倉」として一節を残し、数百の歌を詠んでいる。
渓流は、延長2.1km、谷底巾150〜200m
高さ200mのV字渓谷内を急峻な流れげきざみ、
奥入瀬渓流、黄瀬川渓流と共に十和田国立公園三大
渓流にあげられる渓流美を誇っており渓流の内、上
流部約1。0kmは巨岩、奇岩の断崖が屏風のように
廻り、河床には20tを超える転石が重なり合い独
特の景観を形成している。
下流部約1.0kmの両岸には石英安山岩の柱状節
理がするどく、いく重にも重なりあって連立してお
り、材木岩と呼ばれている。その断面は3角〜8角
とさまざまな柱状をなしており、その一本一本は細
かく規則正しく、特にこの付近では5角や6角が多
いことから、別名六方石とも云われている。又、渓
流中には白銀の流れ、小阿修羅の流れなどと名づけ |
られた渓流が岩をかみ周囲の岩景と見事な調和を
展開している。
渓流の両側には、アオモリトドマツ、ヒノコマ
ツ、コメツガなどの針葉樹とブナ、ミズナラなど
の広葉樹がバランス良くうっそうと生い茂り、新
緑の美しさもさることながら特に紅葉期のながめ
がすばらしく訪れる人々の目を奪う
木の間隠れには、千条の滝、冬栄の滝、夫婦の
滝など、種々の滝が見えかくれし男性的な渓流 |
景観とは対照的に女性的な優しさを表しており、
一時のやすらぎを与えてくれる。
この変化に富んだ渓谷は絶好のハイキングコー
スとして多くの人々に親しまれており、今日では
下流国道394号旧道城ヶ倉橋入口から上流堤川
5号砂防堰堤間に2、051mの渓流歩道が整備され
ており、融雪期、荒天時を除き6月中旬から11
月上旬にかけて午前9時から午後4時迄利用する
ことが出来る。 |